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川連漆器の歴史と技を守り日々進化させる

漆工芸利山(LI-ZAN)
秋田を代表する伝統的工芸品、湯沢市の「川連(かわつら)漆器」。これまで数多くの受賞歴があり、海外展開にも積極的に取り組んできた「漆工芸利山(LI-ZAN)」二代目の佐藤公さん(伝統工芸士認定)にお話を伺いました。
漆工芸利山(LI-ZAN)の写真2
漆工芸利山(LI-ZAN)の写真3

二代目 佐藤 公 さん

川連漆器の歴史と特徴をお聞かせください

 その歴史はおよそ800年以上前の鎌倉時代。武士が宮仕えの合間に、自らの武具に漆を塗ったことが始まりとされています。江戸時代初期には本格的な漆器産業が始まり、藩の保護政策のもと産業基盤が構築されました。
 戦後の経済復興とともに高度経済成長期に入り、昭和51年(1976)には国の伝統的工芸品、平成8年(1996)には県の伝統的工芸品に認定されました。
 その特徴は製法にあります。国産のトチ、ブナ等を素材とした粗挽きの木地に煙を当て、低温、長時間で乾燥させることにより、防腐効果とともに狂いや歪みを軽減し、木質が強化されます。さらに、研いだり磨いたりせず、自然のままの線と光沢を尊重する塗り立ての技法により、豊かな曲線と漆の持つやさしくふっくらとした質感が生まれます。
 軽くて丈夫、断熱性、保温性、抗菌力に優れた川連漆器は、高機能で日常的に使われてきた実用の器なのです。

漆工芸利山(LI-ZAN)の写真4
川面漆器の夫婦椀

漆工芸利山としての信条をお聞かせください

 昭和32年(1957)、先代の佐藤利雄が創設。以来、天然木と本漆を使い、ひとつひとつ手作りで、独自の伝統を守るとともに、常に新しい展開を模索するのが自分なりのこだわりです。息子が後継者として製作に携わっていることはとても心強く、かつては「かわれんしっき」と呼ばれたことさえある川連漆器の知名度アップが最大の目標です。

海外展開に至るきっかけをお聞かせください

 平成11年(1999)、イタリアミラノ在住のインテリアデザイナー川本真人さんから「モダンデザインの漆器を作りたい。協力してほしい!」と旧稲川町役場に電話が入りました。川連漆器を愛用していた川本さんは、品質の高さを感じていたようです。「モダンデザイン」という未知の物に大方の同業者は拒否反応を示しましたが、川連漆器の存続に危機感を持っていたこともあり、挑戦したのが始まりです。
 その後すぐに海外見本市への出展依頼があり、翌年2月、朝食プレートやコーヒーカップ等の漆器がミラノマチェフ国際見本市にてデビューしました。以来、4年に渡りイタリアの見本市に出展を続けると雑誌や専門誌で紹介され、イギリス、スペインなどからも注文が入りました。

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イタリアンデザイン漆器 椀とカップ
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イタリアンデザイン漆器 カプチーノカップ
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平成28年度には、経済産業省「JAPANブランド育成支援事業」を活用してフランスでのプロモーションを実施した。 ※写真はパリでのワークショップの様子

海外展開に向けた取り組みや課題についてお聞かせください

 最近は中国、台湾等アジア圏からの引き合いも増えてきました。インターネットを通じて、いつでも、どこでも取引できる時代になりましたので、その対策のひとつとして電子パンフレットの制作に取り掛かる予定です。
 また、漆塗りの釣り竿やアクセサリーなど、生活用品以外の分野でも注目される商品が出てきました。自分なりに今後の動向を探り、ヒット商品を生み出したいものです。

 海外展開するうえで資金調達は課題のひとつです。行政支援による補助金等を利用する場合、中小零細事業者にとってその手続きは結構ハードルが高いのですが、是非このような補助金制度は継続してほしいです。

今後の抱負をお聞かせください

 国内はもちろん世界で秋田県の川連漆器の知名度を向上させることが第一です。それは、我々の生活向上にも直結するものです。
 また、これまでの長い伝統、こだわり、基本的な製造方法を守り貫くことは、SDGs(持続可能な開発目標)そのものです。川連漆器は昔から使われてきたもので、材料から塗料、接着剤までほとんどが天然素材です。材料と職人の手があれば、修繕して永遠に使い続けることができます。伝統的工芸品がそこに根付いているということは、自然を守り育てながら暮らしていることなのです。

漆工芸利山(LI-ZAN)の写真8

取材後記

地元に800年以上続く伝統的工芸品「川連漆器」の歴史と技を守り継承する。そして、国内はもちろん世界に向けての知名度向上を第一に掲げ、それを実践する。海外展開は決して容易なことではありませんが、佐藤さんのお話を聞いて強い思いと覚悟が伝わりました。

漆工芸利山(LI-ZAN)

〒012-0105 秋田県湯沢市川連町字上平城2-5
電話:0183-42-2900
ファクス:0183-42-5133
http://li-zan.com/
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